- フリーランスエンジニアとして節税対策をどうすればいいか分からない
- 納めるべき税金の種類や仕組みがよく分からない
- 経費が少ないエンジニアでもできる節税対策を知りたい
- 青色申告、iDeCo、NISAなど、どれから手をつけるべきか優先順位が分からない
フリーランスエンジニアとして独立すると、会社員時代とは違い、自分で税金の管理や申告をする必要があります。しかし、税金の知識が不足していると、本来払わなくてもよい税金を払ってしまったり、受けられる控除を見逃してしまったりする可能性があります。
この記事では、フリーランスエンジニアが納めるべき税金の種類から、必ずやるべき節税対策、さらに状況に応じた応用的な節税方法まで、実践的な内容を徹底解説します。この記事を読めば、適切な節税対策を実践し、手取り収入を最大化できるようになります。
フリーランスエンジニアこそ節税対策が重要な理由
フリーランスエンジニアは、他の個人事業主と比較して経費が圧倒的に少ないという特徴があります。この経費の少なさが、課税所得を高め、結果として税負担を重くしてしまうのです。
他業種との経費率の違いを比較
具体的な数字で見てみましょう。年間売上800万円の場合を想定します。
飲食店経営者の場合:
年間売上:800万円
経費(食材費、店舗家賃、光熱費、人件費など):480万円(経費率60%)
事業所得:320万円
フリーランスエンジニアの場合:
年間売上:800万円
経費(PC、通信費、書籍代など):80万円(経費率10%)
事業所得:720万円
このように、同じ売上でも事業所得に400万円もの差が生まれます。所得税は累進課税なので、課税所得が高いほど税率も上がります。事業所得720万円の場合、各種控除を差し引いた後の課税所得によっては、所得税率が23%にも達する可能性があります。
つまり、フリーランスエンジニアは経費で節税する余地が少ないため、控除を最大限活用する節税対策が極めて重要になるのです。
フリーランスが納めるべき税金の種類
まずは、フリーランスエンジニアが納める必要がある税金について理解しましょう。
所得税
個人の所得に対して課される国税で、1年間の所得から各種控除を差し引いた課税所得に対して税率が適用されます。累進課税方式で、課税所得に応じて5%〜45%の7段階に分かれています。
所得税は、所得がある全てのフリーランスエンジニアが対象です。
参考:所得税の税率|国税庁
住民税
居住する都道府県・市区町村に納める地方税です。前年の所得に基づいて計算されます。
住民税は、所得がある全てのフリーランスエンジニアが対象です。前年の所得に対して課税されるため、独立1年目は会社員時代の所得に基づいた住民税が請求される点に注意が必要です。
消費税
商品やサービスの提供に課される間接税で、消費者が負担し、事業者が納税します。
消費税は、基準期間(2年前)の課税売上高が1,000万円を超える事業者が対象です。つまり、独立後2年間は原則として免税事業者となります。
個人事業税
特定の業種に対して課される都道府県税で、法律で定められた70業種が対象です。
年間の事業所得が290万円を超える、対象業種の個人事業主が納税対象者です。
なお、業務委託契約で働くフリーランスエンジニアの多くは、個人事業税の対象外です。個人事業税の対象となる業種に「請負業」は含まれますが、実態として準委任契約(労働時間に対する対価)で働く場合は、対象外となるケースが多いです。ただし、受託開発など完全な成果物納品型の場合は課税対象になる可能性があるため、契約形態を確認しましょう。
節税対策の2つの基本アプローチ
まず、税金の計算の仕組みを理解しておきましょう。
① 事業所得 = 売上 – 経費
② 課税所得 = 事業所得 – 各種所得控除
③ 所得税額 = 課税所得 × 税率 – 控除額
この課税所得に対して、所得税や住民税の税率が決まります。つまり、「経費」と「控除」を活用することで課税所得を減らし、結果として納める税金を少なくすることができるのです。
それでは、2つの基本アプローチを見ていきましょう。
経費を増やす
事業に必要な経費を増やすことで、節税することができます。
フリーランスエンジニアが計上できる主な経費
- パソコン・周辺機器(10万円未満は消耗品費、10万円以上は減価償却)
- 通信費(インターネット回線、スマホ代)
- 書籍・教材費(技術書、オンライン講座など)
- ソフトウェア・サブスクリプション(開発ツール、クラウドサービスなど)
- 家賃(自宅作業の場合は按分。作業スペースが30%なら家賃の30%)
- 光熱費(自宅作業の場合は按分)
- 交通費(クライアント訪問、勉強会参加など)
- 会議費・交際費(クライアントとの打ち合わせでの飲食など)
- セミナー・勉強会参加費
- コワーキングスペース利用料
ただし冒頭で述べた通り、フリーランスエンジニアは経費が少ない職種です。無理に経費を作ろうとして不要なものを購入するのは本末転倒ですので、あくまで事業に必要なものだけを計上しましょう。
控除を増やす
控除を増やすことも節税につながります。
主な控除の種類
- 青色申告特別控除(最大65万円)
- 基礎控除(48万円)※所得2,400万円以下の場合
- 社会保険料控除(国民健康保険、国民年金の全額)
- 小規模企業共済等掛金控除(全額)
- 生命保険料控除(最大12万円)
- 配偶者控除・扶養控除(該当する場合)
- 医療費控除(年間10万円超の医療費)
- 寄附金控除(ふるさと納税など)
経費が少ないフリーランスエンジニアにとって、控除を最大限活用することが最も効果的な節税方法となります。
必ずやるべき節税対策
ここからは、フリーランスエンジニアが必ず実践すべき節税対策を3つご紹介します。
青色申告制度の利用(最大65万円控除)
確定申告の方法の一つで、複式簿記で記帳することで大きな特典が受けられます。
所得から最大65万円が控除されます(青色申告特別控除)。
利用するにあたっては、事前に税務署への届出が必要です。また、控除を最大限受けるには、電子帳簿保存またはe-Taxでの電子申告が必要です。
小規模企業共済の加入(全額控除)
フリーランスや小規模企業の経営者のための退職金積み立て制度です。
支払った掛金の全額が所得から控除されます。月々1,000円〜70,000円で設定可能です。
将来の退職金代わりになる上、節税効果は非常に高いので必ず利用しましょう。
ふるさと納税(税金を実質前払い)
応援したい自治体に寄付(納税)することで、その寄付金のうち2,000円を超える部分が翌年の住民税や所得税から控除・還付される制度です。
注意点として、税金が安くなるわけではありません。税金を翌年に納める分を前払いし、その代わりに自治体からの豪華な返礼品を受け取れるのが最大のメリットです。実質2,000円の負担で返礼品がもらえます。
状況に応じてやるべき対策
先述の対策を実施してもまだ課税所得が高い場合、以下の対策も検討しましょう。
iDeCo(個人型確定拠出年金)への加入
自分で掛金を拠出して運用し、60歳以降に年金または一時金として受け取る私的年金制度です。
掛金と控除
- フリーランスの掛金上限:月額68,000円(年間816,000円)
- 掛金は全額が所得控除の対象
どれくらい節税できるか: 月額6.8万円(年間81.6万円)を掛けた場合
- 課税所得500万円のケース
- 所得税:約16.3万円の節税
- 住民税:約8.2万円の節税
- 合計:約24.5万円の節税効果
NISAとの違い
| 項目 | iDeco | NISA |
|---|---|---|
| 掛金の控除 | 全額所得控除 | 控除なし |
| 運用益の課税 | 非課税 | 非課税 |
| 受取時の課税 | 退職所得控除・公的年金等控除あり | 非課税 |
| 引き出し | 60歳まで不可 | いつでも可能 |
| 目的 | 老後資金 | 自由 |
iDeCoは掛金が所得控除されるため、NISAよりも節税効果が高いです。そのため、老後資金の準備という目的であれば、NISAよりも先にiDeCoへの加入を検討すべきです。
また、会社員は厚生年金に加入していますが、フリーランスは国民年金のみです。国民年金の受給額は満額でも月額約6.5万円程度と少ないため、老後資金の確保という観点からもiDeCoへの加入は非常に重要です。
NISA(少額投資非課税制度)の活用
株式や投資信託などの運用益が非課税になる制度です。2024年から新NISAとして大幅に拡充されました。
自由に引き出し可能というメリットから、車の購入や養育費など、比較的近い未来の資金に使えることができます。
推奨順序としては、節税効果が高いiDeCoを優先し、資金に余裕があればNISAで中期的な資産を増やすのがおすすめです。
その他の重要ポイント
消費税の納税対象者にならないための売上調整
消費税の納税義務は、2年前の課税売上高が1,000万円を超えるかどうかで判定されます。この境目付近の売上がある場合、戦略的に売上を調整することで大きな節税効果が得られることがあります。
具体例で見る消費税の影響
ケース1:売上1,050万円の場合(課税事業者)
売上:1,050万円
経費:100万円
消費税納税額:約95万円(簡易課税でみなし仕入率40%の場合)
事業所得:1,050万円 – 100万円 – 95万円 = 855万円
ケース2:売上を950万円に調整した場合(免税事業者)
売上:950万円
経費:100万円
消費税納税額:0円
事業所得:950万円 – 100万円 = 850万円
比較結果
ケース1の手取り:855万円(売上1,050万円)
ケース2の手取り:850万円(売上950万円)
売上は100万円減っていますが、手取りはわずか5万円しか減っていません。場合によっては、売上を抑えた方が手取りが多くなるケースもあります。
注意点
- 売上調整は合法的な節税対策だが、過度な調整は避けるべき
- インボイス制度導入により、課税事業者になることを求められるケースも増えている
- クライアントとの関係性を損なわない範囲での調整が重要
適度な節税を心がける
節税は重要ですが、やりすぎには注意が必要です。
過度な節税のデメリット
- 融資を受けにくくなる:所得を低く見せすぎると、住宅ローンや事業融資の審査で不利になる
- クレジットカードの審査が通りにくくなる:収入が少なく見えるため、高額なカードが作れない
- 税務調査のリスク:不自然に経費が多いと税務署から疑われる可能性がある
まとめ
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
今回は、「フリーランスエンジニアの節税対策」について、納めるべき税金の種類から具体的な節税方法まで詳しくご紹介しました。
税金の知識は、エンジニアとして働き続ける上で最強の武器になります。もし、これらの対策を実行するのが難しいと感じたら、専門的な判断が必須となる消費税の切り替え前など、重要な局面では税理士に相談することも検討しましょう。今日学んだ知識を活かし、賢く手取りを増やしてください。
